モアサナイトとジルコニア「人工ダイヤモンド」の違いを比較する
モアサナイトとキュービックジルコニアは人工ダイヤモンドという同じカテゴリーの宝石ですが構造が異なる為、輝きも異なっています。モアサナイトの分子構造はSicで結晶構造は六方晶となり、キュービックジルコニアの分子構造はZrO2で結晶構造は立方晶と全く異なる宝石です。この異なった構造によって表れる大きな違いは輝きや煌めきと称される「ファイア」の強さです。モアサナイトはジルコニアよりも科学的に強く美しく輝くことが証明されています。
1.モアサナイトとジルコニアは人工ダイヤモンド
人工ダイヤモンドと呼ばれる宝石は数多く存在しますが、ジェムストーンとしてジュエリー業界で扱われる石は「ジルコニア・モアサナイト」だけです。スワロフスキーはダイヤモンドよりもガラスに近い鉱物です。
ジルコニア(スワロフスキー社)
ジルコニア(ZrO2)はジルコニウムと酸化物(二酸化マグネシウム/二酸化カルシウム)を固溶した二酸化ジルコニウムです。
この二酸化ジルコニウムが人工ダイヤモンドと認定され、一般的に「ジルコニア」と呼んでいます。このジルコニアに対し酸化イットリウムなどの酸化物(安定化剤)を添付したものを「安定化ジルコニア」と呼びます。
そして、酸化無添加ジルコニアに4%~15%の安定化剤(イットリウム/マグネシウム/カルシウム/ハウ二ウムなど)を添付した物が立方晶(Cubic)ジルコニアと呼ばれ、これがジュエリー業界で目にするキュービックジルコニアなのです。
つまりジルコニアには「酸化無添加ジルコニア・安定化ジルコニア・キュービックジルコニア」の三種類が存在しますが、ジュエリー業界で宝石として扱われるジルコニアはキュービックジルコニアになります。
キュービックジルコニア
キュービックジルコニアは頭文字のCZとも表記される人工ダイヤモンドです。
キュービックジルコニアは結晶学的に立方体の形状を持つ結晶体なので「立方晶ジルコニア」と呼ばれており、立方晶系に属するダイヤモンドと構造が似ています。
カラーもダイヤモンドのDカラー(無色透明)に相当しており、ダイヤモンドの代替品として扱われています。キュービックジルコニアはジェムストーンとしての資質も素晴らしくダイヤモンドに迫る輝きのスコアを持っています。
出典:swarovski.comより
- ジルコニア(ZrO2)
モース硬度 :8~8.5
屈折率(煌めき) :2.15~2.18
分散度(ファイア):0.60
スワロフスキージルコニア(ピュアブリリアンスカット)
スワロフスキー社がジェムストーンとしてジュエリー業界に送り出しているキュービックジルコニアはダイヤモンドの輝きには勝てませんでした。
輝きが勝てなかった理由はモース硬度がダイヤモンドよりも低い為、カッティングによる輝きで負けていたからです。
しかし、スワロフスキー社はGIA(米国宝石学会)の審査基準に基づいたキュービックジルコニアに合わせた特別なカット方法を開発しました。それが「ピュアブリリアンスカット」です。
この新しいカット方法を施したジルコニアをスワロフスキージルコニアと呼びます。
このスワロフスキージルコニアの輝きはダイヤモンドの世界基準ともなる「トルコフスキー・ダイヤモンド」の輝きに匹敵することが科学的に証明されています。
モアサナイト(モアッサナイト)
モアサナイトは、1893年にアンリ・モアッサンによって隕石痕から発見された炭化ケイ素(Sic)で結晶学的には六方晶の形状を持つ宝石です。
スワロフスキージルコニアはダイヤモンドと同等の輝きを得た人工ダイヤモンドです。
しかし、モアサナイトは、宝石としての輝きのスペックが高いことが科学的に認められており、ダイヤモンドの輝きを超えた人工ダイヤモンドとして認知されています。
- モアサナイト(Sic)
モース硬度 :9.5
屈折率(煌めき) :2.69
分散度(ファイア):0.104
天然のモアサナイトも存在しますが、大変希少性が高いので商業利用は禁じられています。つまり、一般的なモアサナイトとはジュエリーとして扱える人工物のことを意味します。
2.モアサナイトとジルコニアの違い
モアサナイトはSicでジルコニアはZrO2という元素なので両者は構造が全く違う宝石です。結晶構造的にもジルコニアは立方晶でモアサナイトは六方晶となり、宝石が持つ輝きも異なっています。しかし、どちらの宝石も「人工ダイヤモンド」という括りでは類似点もあります。
石の元素や結晶構造が異なる
モアサナイトはSicですがジルコニアはZrO2と構成される元素その物が異なり、見た目は似ていますが全く違う元素鉱物です。
組成が異なるので、宝石としての輝き(資質)も違った表情を見せます。ダイヤモンドに代表される宝石としての輝きを表すスコアもモアサナイトがジルコニアを圧倒します。
ジルコニアはジルコニウムが酸化したものですが、モアサナイトケイ素が炭化したものです。ダイヤモンドは炭素(C)ですので、構造上モアサナイトの方がジルコニアよりもダイヤモンドに近い特性を持ちます。
モアサナイトとジルコニアの輝きスコア比較
各宝石の輝きの指標となる項目を比較 ※ダイヤモンドはベンチマークとして掲載 |
モアサナイト![]() |
ジルコニア![]() |
ダイヤモンド![]() |
モース硬度 | 9.5 | 8.0~8.5 | 10 |
屈折率(煌めき) | 2.69 | 2.15~2.18 | 2.42 |
分散度(ファイア) | 0.104 | 0.60 | 0.044 |
結晶構造 | 六方晶 | 立方晶 | 等軸結晶 |
上記のスコアから、モアサナイトはキュービックジルコニアよりも石が持つ輝きの素性その物が強く美しいことが科学的に証明されてるのです。
具体的にはモアサナイトはモース硬度もジルコニアより高い為、より光を屈折させて放つ複雑なカットや研磨にも耐えられます。
そして、カラーもダイヤモンド最高ランクのDカラーでありながら光の屈折率と分散がジル国アに比べて高い数値を持つのでファイアも強いです。
さらに、ダイヤモンドと同様に構造に炭素を持っているのでダイヤモンドのような様々な色の光を放つことができます。ジルコニアには炭素が無い為、ダイヤモンドやモアサナイトが放つ妖艶なファイア(輝き)が弱い印象があります。
すなわち、一番輝きが強い人工ダイヤモンドは視覚的にも科学的にもジルコニアを凌いでいるモアサナイトということになります。
モアサナイトとジルコニアの類似点
モアサナイトとジルコニアは「人工物」という共通項を持つ上で以下のような似たような特徴を持っています。
- ローコスト
モアサナイトもジルコニアも合成ダイヤモンドなので工場(ラボ)で生産される人工物です。
人工物である以上、希少性というコストを跳ね上げる要因が無くなり、生産の効率化も手伝い天然のダイヤモンドと比べても非常に安価な宝石となります。
モアサナイトの市場価値の目安としては天然ダイヤモンドの1/10以下と言われています。 - カラーリング
人工物である以上、生産工程で手を加えることは可能です。
つまり、モアサナイトもジルコニアも人工物ゆえに「ブルーモアサナイト/ジルコニア・ピンクモアサナイト/ジルコニア/グリーンモアサナイト/ジルコニア」など多彩なカラー展開が可能です。
ジルコニアに関しては金属元素の添加という方法でで赤、橙、青、緑、ピンク、琥珀色など様々な色のジルコニアが作られます。
3.人工ダイヤの中で最もダイヤモンドに近い宝石
モアサナイトは人工ダイヤモンドの中でも天然のダイヤモンドに近い宝石です。ダイヤモンドは炭素で構成されており、モアサナイトは炭化ケイ素で構成されています。どちらの石にも炭素が含まれていることと、結晶学的に結晶構造が似ていることが解っています。
モアサナイトはダイヤモンドに近い構造を持つ
ダイヤモンドは炭素(C)で構成されています。対してモアサナイトは炭化ケイ素(Sic)で構成されています。
どちらの石にもC、つまり炭素が構成上含まれており、炭素が含まれているからモース硬度もモアサナイトが9.5でダイヤモンドが10と非常に高いです。
そしてダイヤモンドとモアサナイトは構造が似ていることから石が持つカラーも無色透明と類似しています。
モアサナイトとダイヤモンドの違いについて
モアサナイトにはダイヤモンドと異なる部分も存在します。それはダイヤモンドよりもモアサナイトは輝きが強いということです。
輝きや煌めきを表す表現に「ファイア」という言葉を用いますが、ファイアを作り出す要素は石が持つ「カラー・屈折率・分散」です。
ダイヤモンドとモアサナイトのカラーは同等ですが、屈折率はダイヤモンド2.42に対しモアサナイトが2.69と高く、分散についてはダイヤモンドが0.044に対しモアサナイトが0.104と凌駕しています。
つまり、モアサナイトは人工ダイヤモンドでありながら科学的にダイヤモンドよりもファイアが高いジェムストーンということになります。
更に詳しくダイヤモンドとモアサナイトの違いを知りたい方は下の記事をご参照ください。